ぬるまゆボードゲーム部 | オリジナル発酵ボードゲーム『みん床』で考えたこと
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オリジナル発酵ボードゲーム『みん床』で考えたこと

ゲームマーケット2019大阪初出展に向けてボードゲームを考案中なのですが、これがなかなか難しいです。

出展候補の「みん床(みんなのぬか床)」もバージョンアップするごとにオリジナリティが弱くなり、気づけば参考にしたボードゲームのひとつ「インカの黄金」に回帰した感じになりました。

「高いお金を払いボードゲーム化するほどでもないかな。」と悩みどころです。
とりあえず「みん床」はオリジナルボードゲーム案のひとつとしてストックしておきます。

そこで「みん床」のゲームルールを考えて行く中で「どのような経緯でバージョンアップを行ったのか?」を今後自分で振り返れるように整理というよりはメモしてみました。

みん床とは?

みん床は「みんなのぬか床」略語。
ぬるまゆボードゲーム部部長(私のことです)が考案した発酵ボードゲームです。

みんなでぬか床を共有してもっともおいしいタイミングで野菜を取り出せた人が勝ちというシンプル系のゲームです。

Version.1「ぬか床をまぜる?まぜない?」

最初の提案時のゲームルールです。プレゼン用にパワポにまとめてます。

ルール説明

アクションカード「まぜる」×3、「さぼる」×1をすべて裏向きにして事前に場に配置しておく。配置されたアクションカードごとに一人ずつ下記からアクションを選択

「素材(野菜)を入れる」:手札の野菜をぬか床に漬ける

「素材(野菜)を取り出す」:すでに漬けてある野菜を取り出してポイントを獲得

「塩を入れる」:もしまぜないが出た場合、無効にできる。

を選択して自分の前に表向きに置く。

みんなのターンが終了すれば裏向きにしていたぬか床カードを表にする。その際、「さぼる」ならみんな全滅。「まぜる」なら1ポイント獲得してそのまま次の日に進める。漬けてる期間に比例してポイントも上がります。

もし誰か「塩を入れる」カードを出していれば「まぜてない」を防げることも出来るが、一人一回しか使えない。

Version.1の良い点

・せっかくためたポイントがいきなりゼロになる「さぼる」のスリルが楽しい。

・相手を信じてたのに「さぼる」が出た時の裏切られた感も楽しい。

・相手の行動を読み「塩カード」で防げると盛り上がる。(テストプレイしながら「塩を二枚配置してしまうと防げなくなるダブル塩」ルールも生まれた。)

Version.1の悪い点

・早い段階で「さぼる」にやられるとゲームが終わるまで暇

・一人ずつアクションをするので全員のターンが終了するまでが長い

・「さぼる」カードの枚数が固定のため最終的に安全地帯が予測出来やすい

感想

名前のインパクトはありますね。ぬか床のボードゲームはまだ市場にない(少ない?)と思います。
その場で作り早速テストプレイしたところ、予想外にもみんなの反応は良かったので、「これはいけるかも!」という手ごたえは感じました。

まだまだ粗削りなので細かくルールを見直す必要はあります。
「ぬか床毎日まぜないとダメですよ。」というメッセージは伝わりそうです。

Version.2「ぬか漬けの食べごろは乳酸ポイントで決まる!」

前回はそれなりに手ごたえがあったので、「早くも製品化かな?デザイン考えないと。」思ってましたが、ぬか床の知識をつけていくほど「あれ、そうなの?」と勘違いがたくさんありました。

ボードゲームを遊びながら「発酵の知識も学べる」ようにしたいので、発酵の仕組みとゲームルールに矛盾がある場合は正しく調整が必要です。

実際にぬか床をつくってみた。

発酵との矛盾点

1.ぬか床をまぜまくれば良いわけでない!

ぬか床にはたくさんの乳酸菌がいます。その乳酸菌たちが野菜に含まれる糖やたんぱく質を分解して人間の体良いものに分解してくれます。これが発酵です。

てっきりまぜれば乳酸菌が活発化してより分解速度を速めて美味しくしてくれるものだと考えていました。が、まったくの逆でした。

まぜることでと空気の嫌いな乳酸菌(嫌気性菌)の力を抑え、増えすぎないように調整を行っています。乳酸菌が増えすぎると野菜が過発酵して酸っぱくなり、おいしくなくなります。

この酸っぱくなる現象を過発酵と言います。

「乳酸菌が増えすぎないためにぬか床をまぜます。」

2.塩だけでは「まぜなてないぬか床」を対処できない!

まず乳酸菌は雑菌を寄せ付けない働きがあります。

ぬか床をまぜないと乳酸菌が弱まり雑菌が近づくので、殺菌効果の高い塩で追いはらうと考えていましたが、(1)にあるように乳酸菌は逆に強くなります。

ただ強くなるのはぬか床内です。表面は隙だらけなので表面には空気を好む菌(好気性菌)たちが繁殖して腐敗の原因となります。ぬか床をまぜれば表面に乳酸菌が出るので雑菌を寄せ付けません。

確かに塩を入れる事で雑菌を防げますが、まぜないと乳酸菌は元気になり過ぎて漬けてる野菜を酸っぱくしてしまいます。

酸性である乳酸菌を弱めるためにはアルカリ性の「卵の殻」をいれて、ぬか床内を調整するほうが効果的のようです。

「まぜてないと乳酸菌が増大するので、抑えるために卵の殻を入れます。」

3.ぬか床は漬ければ漬けるほどおいしくなるわけではない!

ぬか床は「おばあちゃんが何カ月も専用の容器に野菜を漬けている」というイメージがあったので、長時間つける方が良いだろうと考えていましたが、それは「古漬け」であって「ぬか漬け」とはやり方が異なるようです。

「ぬか漬けは」漬ける時間も長くても数日ぐらいで良く、ナスやきゅうりなどは半日漬ければ食べごろです。

(1)(2)と共通しますが、ぬか床に野菜を漬け過ぎるとどんどん乳酸菌が入ってくるので結局は酸っぱくなり過ぎて美味しくなります。

「野菜漬け過ぎると美味しくなくなります。」

ルール説明(修正&追加)

「漬けた日にちがポイント」になるのではなく「ためた乳酸がポイント」に変更

ぬか漬けを食べごろにするのは漬けた日数ではなく、野菜に吸収された乳酸菌の量です。なので日数によってポイントが決めるのではなく、「まぜる」カードに新しく記載した乳酸ポイント(1~5ポイント)で決めることにしました。

乳酸ポイントがたまり過ぎてもダメ

発酵の仕組みとして乳酸をためすぎてもすっぱくなり食べごろではなくなります。なので乳酸ポイント20以上獲得してしまったら過発酵として0ポイントとします。

参加プレイヤーは順番関係なく一斉にカードを場に出す方式に変更

一人ずつカードを場に出していると他プレイヤーの待ち時間が長くなります。そこでアクションカードをすべてカードにして裏向きで一斉に場に出せようにしました。

全員が場にカードを出したら一斉に表にしてます。

まぜる、まぜないのカードをランダムに配る

前回はみんなに1枚づつ「さぼる」カードを配っていましたが、ランダムにして誰が何枚「さぼる」カードを持っているか分からなくしました。これで誰が「さぼる」カードをもっているか推理し辛くなり、緊張感が増すはずです。

塩から卵の殻カードに名前を変更

発酵の仕組みと整合性を合わせるために名前を変更。効果は変更していません。

Version.2の良い点

・一斉にアクションカードを場に出せるのでゲームのテンポがよくなった。

・発酵の仕組みに準じているのでルール説明にも後ろめたさがない。

Version.2の悪い点

・卵の殻をつかうタイミングがない
「さぼる」カードがランダムになったのでまったく予測できなくなった。(情報が少ない事象に対してメリットが少ない)

・過発酵を意識し過ぎて無難なアクションになる
前回はためればためるほど良いというシンプルなルールだったけど、今回はポイントの上限を意識する必要があるために、冒険をせずに無難に野菜を取り出すことが増えた。

・だいたいみんな最初から野菜を漬けるのでタイミングが同じ。競ってる感が弱い。

・計算が複雑になった。

感想

いろいろと微妙でしたね。
発酵の仕組みに合わせるとルールがやや複雑化しました。

「さぼる」カードの所有者をランダムにしたので「卵の殻」で防ぎようがないですね。こうなってくると最初にみんなが場をつくる必要性もなさそうですが、それをするとオリジナリティが弱くなります。(インカの黄金と似てくる)

一斉にカードを出せるようになったのは良さそうです。ゲームにスピード感がでて来ました。しかし、色々と改善は必要です。ゲームに必要な「ワクワク感」「ドキドキ感」要素が弱いです。
あと「連帯感」っていうのも必要かもしれません。

Version.3「乳酸菌は山分けしよう!」

バージョンアップという名の改変繰り返し、雲行きが怪しくなってきたみん床。参考にさせてもらったボードゲーム「インカの黄金」の面白いところを再研究してみることにしました。「あ、インカの黄金に似てきた。」と感じる瞬間でもありました。

ルール説明(修正&追加)

漬けれる野菜は一つのみ、はじめから野菜を漬けておく

野菜をつけるタイミングはプレイヤーが決めれましたが、最初から漬ける人が多く無駄な選択肢なので1ラウンドで扱える野菜は1つのみとしました。そうすると「漬けておく」カードと「野菜を漬ける」カードを使う必要がなくなったのでルールが簡単になります。

乳酸ポイントを山分けスタイルに変更

山分けして余った乳酸ポイントはためておき、最初に野菜を取り出したが人が獲得できるようにします。取り出すメリットが増える事でみんなの行動に違いが生まれやすくなります。

山分けスタイルするので乳酸ポイントも最小:1~最大:15までお幅を大きくしました。(もし4人プレイで乳酸ポイントが10の時は、みんな2ポインで余りも2ポイント)

「まぜる」or「まぜない」をやめて「乳酸菌」or「過発酵」に変更

発酵の仕組みとして「まぜる」「まぜない」でポイント計算するのではなく、乳酸菌がどのくらい野菜に浸透したかをポイント計算するほうが正しいです。

下記のように変更しました。

ぬか床エリア → 乳酸エリア:みんなが最初に配置するカードのエリア

まぜるカード → 乳酸ポイントカード:1~15の間の乳酸ポイントが獲得(人数で山分け)

さぼるカード → 過発酵カード:獲得した乳酸ポイントが2倍になる(すぐゲームオーバーになるので0ポイントになるのは辞めました)

1ゲーム1回で終了するのではなく1ゲーム3回にする

最初から1ゲーム3回と伝えておくことで、1回目は様子見としてプレイしやすくなります。

野菜ごとに食べ頃を設定

みんな同じアクションになりがちなので、漬ける野菜ごとに指定の乳酸ポイント(食べごろ)を設定しました。

漬ける時間は野菜の種類別に「長い」「普通」「短い」の3パターンです。これで取り出すタイミングにも違いで出ます。

Version.3の良い点

・山分けできない乳酸ポイントは積み上がっていくので取り出すメリットが出来た。

・野菜に食べごろ属性が加わり野菜の個性がでた。

Version.3の悪い点

・計算がより面倒くさくなった。

・過発酵しても獲得した乳酸が2倍なるだけなのでドキドキ感が弱い

・情報が多くルールが複雑化した。

感想

インカの黄金との違いを作るため、ルールを付け加えたので複雑化しました。ここはインカの黄金のシンプルさに合わせ、それにぬか床について学べる情報を入れ替えたほうが良さそうです。

だいぶルール作りの沼に入った感じです。ずるずると抜け出せません。今思えば、Version.1ルールから大きくルールを変更した際に「立ち戻れる方向性」を考えておくべきだったかもしれません。

Version.4「遊びながら発酵の知識をつけよう!」

現段階の完成系となります。ここで一旦終了です。複雑化したアクションを削り、シンプル化したルールにぬか床知識をプラスさせました。ほぼルールはインカの黄金です。考え抜かれたゲームルールに従うのが一番なんですよね。やっぱり。

ルール説明(修正&追加)

野菜ごとの食べごろをなくして、全野菜20乳酸ポイント以上で過発酵とする

発酵の仕組みとしてはあった方が良いルールです。
前回は野菜ごとにわけていたましたが、全野菜均一20ポイントが上限です。

点差をあまり開かせない調整用としてもこのルールはあってよさそうです。

ただ、プレイ人数によっては乳酸ポイントのたまり方は変わってきますので、プレイ人数ごとにここは変更したほうが良いかもしれないです。

野菜ごとにぬか漬け情報を記載

野菜カードの効果は同じなのですが、カードに記載している内容は変更します。

きゅうり、なす、だいこんなど野菜ごと「実際にどのくらいが漬けるとよいか?」ぬか漬け情報を掲載します。

過発酵カードをやめてトラブルカードを追加

過発酵カードが出て手持ちの乳酸ポイントが2倍になってもあまりドキドキ感がないので、ここもインカの黄金ルールにのっとりトラブルカードにします。

この同じ種類のトラブルカードが2枚でた場合その時点で過発酵となり乳酸ポイントは0になります。今回準備したトラブルカードはこちら

猛暑カード×3

塩不足カード×3

水気カード×3

すべてぬか床内が過発酵となり雑菌が入りやすくなる状態です。

ぬか床をつくるうえで注意しないといけないトラブルをカード内容として豆知識として認識してもらいます。同カード内に出てきたトラブルの解決方法も記載したいです。

Version.4の良い点

・ルールがシンプルになった。

・ぬか床づくりの知識が学べる

Version.4の悪い点

・トラブルカードと乳酸カードの枚数によるバランス調整が必要
今回はトラブルカードが少なめでなかなか終わらなかった。

・乳酸ポイントを配布するのが手間取る

各自で山分けするなど工夫は出来そう。

感想

ゲームとしては楽しめるのですが、ほぼインカの黄金ルールです。
楽しみながらぬか床知識が学べるボードゲームということであれば良さそうです。
金額にもよりますが、試しにつくてみても良さそうです。

まとめ

なんとなくですがボードゲームをつくる流れは見えてきました。まだ一つも作れてないですが。

ざっくりとこんな感じです。

(1)方向性 → (2)収集と思考 →(3)プロトタイプ →
(4)販売戦略 → (5)制作 → (6)告知

販売できるレベルのボード―ゲームを新しく作る場合、安く見積もっても10万円は超えそうなので「本当にそれでいいの?」と振り返れる「(1)方向性」はしっかり固めていたほうが良さそうです。

あと「(2)収集と思考」はアイディアです。日頃の情報収集とアイディアメモは欠かせないようにします。

「(3)プロトタイプ」にはテストプレイが必要不可欠です。協力してくれる仲間が必要です。出来ればメンバーが異なる複数のグループが理想です。

「(4)販売戦略」売ることが目的ならここも考えておく必要があります。制作に入ってしまうと後戻りできないので、何をつくるか決まった際に考えましょう。売るためにはコンポーネント重要です。

ボードゲーム作るまでの流れは改めて記事として更新する予定です。

最後にマインドマップもバージョンごとに更新していきましたので、こちらもアップしておきます。
ただ、気ままに更新していたので、今回まとめたバージョンとは整合性がありません。(画像大きくなります。)

ver.1

ver.2

ver.3

ver.4

ver.5